デストロン軍団は、今日もエネルゴンを求めて宇宙を旅していた。
「あ〜あ、中心の恒星から半径4.3光年以内に他の恒星が一つも無いなんて、随分へんぴな所よね〜。」
宇宙船のメインコンピューター・ナビ子は、辺境の1恒星系を航行していることにかなり不満を抱いているようだ。
「ナビ子ちゃん、文句は言わないの。こういう穴場にこそ、エネルゴンは豊富にあるものだよ。」
「だと良いんですけどね〜、メガトロン様。案外、サイバトロンが目を付けているかもしれませんよ。」
デストロンの一人・スタースクリームが、毒のある口調でメガトロンに忠告する。
「スタースクリーム、良く前からそう決め付けちゃあいかんだろう。それに、サイバトロンなんていつもの様に軽く一ひねりすれば良いじゃないか。」
「……そう、ですね……。」
どうやらスタースクリームはメガトロンに丸め込まれたようである。そこに、サウンドウェーブが割って入ってきた。
「メガトロンサマ、コノコウセイケイノダイ3ワクセイニ、コレマデニナイエネルゴンノハンノウガミラレマス。」
サウンドウェーブの言葉に対し、メガトロンは歓喜の表情を示し、
「よっしゃぁぁぁっ! でかしたぞサウンドウェーブ。今からその惑星へ行くぞ!」
『イェッサー!!』
一方その頃、メガトロンが目を付けた惑星の宙域には、既にサイバトロンの宇宙船がいた。
「……なんともきれいな星ですね……。こんなきれいな星には、デストロンの連中を入れたくありませんね。」
「全くその通りだアイアンハイド。それにこの星には今まで見られなかったほどのエネルゴンがあるらしい。だとしたら、ますます奴らをこの星に近づけるわけにはいかないな……。」
コンボイはそう語りながら、今までデストロンとの戦いに巻き込まれて無残な姿へと変貌した多くの惑星の事を悔やみ、感慨にふけっていた。そこへハウンドが、静寂を打ち破るかのごとくけたたましい口調でコンボイに向かって叫ぶ。
「コンボイ指令! 3時の方向にデストロンの宇宙船が!」
「何!? 総員、戦闘配備につけ! 奴らを1歩たりとも、この星に近づけてはならない!!」
一方デストロンも、サイバトロンの宇宙船に気付いて、
「やっぱり俺の言ったとおりだ! サイバトロンの奴らに先を越されていやがった!」
「落ち着けスタースクリーム! 今から奴らをぎゃふんと言わせてやる!」
サイバトロンとデストロン、双方の宇宙船による激しい砲撃戦が始まった!
サイバトロンは青く美しいこの惑星を守るため、デストロンは惑星にあるエネルゴンを手に入れるため、お互い一歩も譲らない。そして、双方が放った砲弾がお互いの宇宙船のメインエンジンを直撃した。
『うわぁっ!』
「うひゃあっ!」
双方の宇宙船はコントロールを失い、惑星へ落下していく。
「あ〜っ! このままじゃあ惑星に激突だよぉっ!」
サイバトロン戦士達はバンブルをはじめ、全員がうろたえている。
「宇宙船が惑星に激突するまで、あと35000サイクル。皆さん、安全のための用意をしてください。」
「そんな事言ったって何も出来ないよ〜!」
テレトランTの冷静な口調に、バンブルはさらにうろたえてしまっている。
そんなことをしているうちに、惑星の地表がどんどん近づいてきた。さらに慌てるサイバトロン戦士達。
「あわわわわ……。俺達はここで死ぬんでしょうかぁ〜?」
「みんな、ここで諦めてはいけない。助かることを信じて、全力を尽くすんだ!」
「んなこと言ったって、何も出来ないよ〜、コンボ〜イ〜!」
惑星の地表が、目前に迫ってきた!
「惑星衝突まで、あと8サイクル。……5,4,3,2,1……」
ドオォォォォォォン!!
サイバトロンの宇宙船は、轟音と共に惑星に不時着した。
一方、デストロンの宇宙船も、
ザッパアァァァァァン!!
惑星の海に不時着した。
こうして彼らは、その星の住民が“地球”と呼んでいる惑星にたどり着いたのだった……。
「ん……」
サイバトロン達は不時着のショックで気絶していたが、しばらくしてコンボイが目を覚ました。
「……みんな……、生きているか……」
コンボイが気絶しているメンバーに声をかけると、
「……こちらマイスター、何とか、生きております……」
「……こちらホイルジャック、危うく逝ってしまうところじゃったが、何とか……」
次々と目を覚ましていった。どうやら、全員無事なようだ。
「みんな、無事でよかった……。とにかく、今すぐにこの星の事を調べなければならないだろう。デストロンの動きも、気になるしな……。」
「ならばコンボイ、この星に在る物に姿を変えたほうがよいじゃろう。そうすれば、奴らにも怪しまれないからの。」
「……そうだな、ホイルジャック。今すぐ探査メカを出して、スキャンできる物を探そう。」
サイバトロンは早速探査メカを出し、自分達がスキャンできそうなものを探し始めた。幸い、地球には比較的高度な文明が発達しており、候補となる機械はいくらでも見つかった。サイバトロン達はその中から、最もありふれて、自分達にもぴったり合う機械、“自動車”をスキャンすることにした。
一方デストロンも、同じように探査メカを出して、自分達がスキャンできそうなものを探していた。
「う〜む、サイバトロンどもに分かりにくくて、強そうで、カッコいいものは……っと、なかなか見つからないなぁ〜。」
散々悩んだ結果、デストロンは兵器や家電製品をスキャンすることにしたのだった。
こうして、地球のものに変形する能力を得た彼ら“トランスフォーマー”達は、それぞれ行動を開始した。サイバトロンはデストロンの動きを探るため、デストロンはエネルゴンを探すために……。
一方、サイバトロンの宇宙船が地球に不時着したというニュースは、既に地球人達の知るところとなっていた。
「『謎の宇宙船が富士山に墜落!』……って、なんかいまいちうさんくさいのよね〜。何かの映画のセットなんじゃない? それとも、ヤラセ?」
「違うよ姉ちゃん! あれは本物だって! 宇宙人が地球に来たんだよ!」
ここは地球の一国家・日本にある、平凡な家庭。なにやら姉弟と思わしき男女が2人、サイバトロンの宇宙船の記事について口論している。
「だからあんたはまだまだガキって言われるのよ。分かってる?」
「姉ちゃんこそ、夢が無いんじゃないの? 何でもかんでも二言めにはウソだ、ヤラセだとか言って……」
「……何よ、その言い方。何か文句でもある?」
2人の間に険悪なムードが漂っている。そこへ、
「はいはい、姉弟ゲンカはそれくらいにして、さっさとご飯食べて学校に行きなさい。遅刻するわよ。」
2人の姉と思わしき人物が、間に割って入ってきた。
『ふぁ〜い。』
2人は不服そうに返事をして、仕度を整え始めた。
さて、行動を開始したデストロンは、エネルゴンの反応を求めて都市の上空を飛び回っていた。
「……しっかしまあ、こんなへんぴな星にこんな高度な文明が栄えているたあ驚きだな。お陰でスキャンするものには困らなんだが、エネルゴンが取れそうなところを探すのが大変だ。」
メガトロンは見事な都市文明に感嘆の表情を隠せずにいた。建造物が林立する都市部でのエネルゴン発掘は難しい。故にデストロンは、エネルゴンの発掘が容易な場所を探しているのだ。
「メガトロンサマ、アソコナラバ、エネルゴンノハックツモタヤスイカト。」
サウンドウェーブは学校の位置を指差して、言った。メガトロンもその言葉に反応して、
「おーし! 早速あの場所に行くぞ!」
『イェッサー!!』
こうしてデストロンは、ターゲットを学校に定め、進攻を開始した。
一方、ターゲットになった学校にいる者達も、デストロンが近づいてくるのに気がついていた。しかし、それが何であるかまでは当然ながら気付く術が無かった。
「何だ? 変なものがこっちに向かって飛んでくるぞ!」
「もしかして、朝のニュースでやってた宇宙船に乗っていた宇宙人?」
「いや、あれはロボットだ! ロボットがこっちにやって来るぞ!」
デストロンが校庭に着地すると、教室の窓は野次馬で一杯になった。
「メガトロン様、この星の連中、我々に釘付けみたいですぜ。人気者になったみたいですね〜。」
「人気者になったみたいじゃなくて、本当に人気者なんでしょ! スタースクリームのお馬鹿!」
メガトロンはスタースクリームを軽く叩いたあと、ギャラリーの方を向き、一呼吸おいて話し始めた。
「皆さん! 我々は決して怪しいものではありません! 我々はただ、この星の地質検査をするために、宇宙の果てからはるばる……」
メガトロンの演説に、聴衆はすっかり釘付けになっている。が、中にはメガトロンの言動を怪しんでいる者もいた。
「……なんか、こういうことを言う奴って、あからさまに怪しいのよね……。嫌なことにならなければ良いんだけど。」
メガトロンの長い演説が終わると、デストロンはエネルゴンの調査に乗り出した。グラウンドを掘りながら、懸命にエネルゴンを探すデストロン軍団。しかし、出てくるものは不純物の多い粗悪品ばかりで、なかなか良質なものは出てこない。
「は〜っ、掘れども掘れども、なかなか良いもんは見つかりまへんな〜。」
エネルゴンのあまりの質の悪さに、溜め息を漏らすメガトロン。そこに、サウンドウェーブが一言添える。
「メガトロンサマ、アノタテモノノシタニ、マワリヨリモツヨイエネルゴンノハンノウガアリマス。アソコナラバ、リョウシツノエネルゴンガウマッテイルカモ……」
「え? そうなの? じゃあ……」
周りのデストロン兵士は、やけに期待している。
「あの建物、邪魔だから潰しちゃおっか?」
『よぉぉぉっしゃぁぁぁぁっ!』
メガトロンの指令に、デストロン兵士達は歓喜の声をあげた! 彼らは、今までのうっぷんを晴らすかのごとく、校舎に集中攻撃を加える!
『うわぁぁぁぁぁぁっ!』
デストロンの突然の攻撃に、中の人間達は慌てふためき、逃げ惑う。さらに、フレンジーが屋上に上がって、
「この俺様のハンマーアームで、さらに壊し易くしてやるぜ!」
ハンマーアームで校舎を叩きだした! 校舎は激しい共振を起こし、デストロン軍団の集中砲火も重なって、崩壊しつつあった。
だが、デストロンがこんなに派手に暴れまわっていて、サイバトロンが気付かない訳が無い。
「! コンボイ指令!! デストロンです! デストロンが東の方角で暴れまわっているようです!」
「何!? 本当か、ハウンド!」
「はい! コンボイ指令、ご命令を!」
「よし! サイバトロン軍団! 今からデストロンを止めに行くぞ!」
『了解!!』
こうして、パトロール中のサイバトロン達は、デストロンが襲撃している学校へと向かった。
一方学校では、デストロンの執拗な攻撃が続いていた。幸い、死者は出ていないようだが、校舎は無残な姿に変貌していた。
「ちょっとあんた達、私達の学校をこんなにして! いい加減にしなさいよ!」
安全な所に非難していた生徒達の中から、一人の少女が果敢にもランブルに向かっていった。が、
「何だてめえは! あっちに行け!」
あっさりとやられてしまった。
「きゃあっ!」
「姉ちゃん!!」
吹っ飛ばされた少女の元へ、彼女の弟らしき少年が駆け寄る。そこへ、サンダークラッカーがやってきた。
「バカが! たかだか細胞の塊のお前らが、俺達超ロボット生命体に勝てるとでも思ったのか!」
サンダークラッカーが二人に銃口を向ける。絶体絶命のピンチだ。が、
『待て!』
絶妙なタイミングで、サイバトロン軍団が駆けつけた。
「ちっ、サイバトロンめ……。いいところで邪魔しに来やがって!」
デストロンは攻撃を止め、サイバトロンの方を振り向いた。非難している人々は、新たな勢力の出現に戸惑っているようだ。
『何なんだ? 自動車がしゃべっているぞ!』
続いて、コンボイが号令をかける。
「サイバトロン軍団、トランスフォーム!」
コンボイの号令と同時に、サイバトロン戦士全員がロボットモードに変形した。
『おおっ! 自動車がロボットに変形したぞ!』
地球人の目は点になっている。コンボイはさらに言葉を続ける。
「メガトロン!見知らぬ星で、住民達にいきなりこんな仕打ちをしていいと思っているのか!」
「ケッ! きれい事だけで、宇宙は救えねえんだよ、コンボイ!! デストロン、アタ〜ック!!!」
メガトロンの指令と同時に、サイバトロンとデストロン、両者の地球での最初の戦いが始まった!
「サイバトロン軍団! 撃てーい!」
コンボイの号令と同時に、サイバトロンは一斉攻撃を開始した(彼らの後ろには地球人がいるんだから、もう少し考えろよサイバトロン)。デストロンは数で劣る上、
「うわっ! ……チクショウ! 穴が邪魔でうまく避けられねぇ!」
自分達が掘った穴にはまりまくって、ほとんど身動きがとれずにやられたい放題であった(デストロンがバリケードになったおかげで地球人達にはほとんど被害は出ていない)。たまりかねたメガトロンは、
「え〜い不甲斐ない奴らめ! 俺様がまとめて片付けてやる! トランスフォーム!」
キャノン砲に変形して、その銃口をサイバトロンの方に向けた。銃口にはエネルギーが見る見るうちに充填され、火を噴けばサイバトロンなどひとたまりもなさそうだ。が、
「そうは問屋が、卸さないぜ!」
クリフがそう言うと、彼は足元に落ちていたエネルゴンのくずを拾い、それをメガトロンの銃口めがけて投げつけた!
「カニぃ何ぃ〜!!」
エネルゴンくずは発射直前にメガトロンの銃口にはまった。そして、
ドッカアァァァァァァァン!
メガトロンキャノンは大暴発を起こした。デストロンの連中は、大爆発と共に、爆風に吹き飛ばされて遥か彼方へ飛ばされてしまった。
「うわあぁぁぁぁぁっ! 覚えていろよぉぉぉぉぉっ!」
戦いが終わり、サイバトロン戦士達はデストロン軍団によってめちゃくちゃにされた学校の修復作業に入った。その中でコンボイは、見知らぬ星の民を自分達の戦いに巻き込んでしまったことを悩み、思いふけっていた。
(まさかいきなりこんな事になってしまうなんて……。メガトロンのせいとは言え、彼を止められなかった私も同罪だ……。)
「そんなに悩むことはありませんよ、コンボイ指令。」
コンボイが沈んだ表情で思いにふけっていると、マイスターが側にやってきた。側には地球人の少年がいる。
「? どうした、マイスター」
「コンボイ指令に、どうしてもお礼が言いたいって言う奴がいるんですよ。」
「……私には、礼を言われる資格は無い……」
コンボイはそう言うと、マイスターに背を向けてしまった。そこへ、少年が反発するような口調でコンボイに言葉をかける。
「そんなことはないよ! すっごくカッコ良かったし、何よりあんた達は、俺達の命を救ってくれたじゃない!」
「……そうだったな。フッ、私は何を悩んでいたんだ……」
少年の熱い語りかけにより、コンボイは元気を取り戻した。紅い夕日が、コンボイ達の体を紅く染めていた……。
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