#2:メガトロンの契約


 サイバトロン戦士達は、前回の戦いで救い出した地球人の姉弟を連れて、帰路についていた。と言うのも、彼らが是非とも、サイバトロン基地を見学したいと頼み込んだからであった。そしてサイバトロ ン側も、地球のことをもっと詳しく知るために、地球の事を教えてくれると言う条件付で、彼らの願いを聞き入れたのであった。
「俺はユウタ、って言うんだ。地球のことなら俺に聞いてくれよな、コンボイ。」
「私はサラ。よろしくねっ。」
「ああ。こちらからもよろしくな。」
 お互い自己紹介が済むと、彼らはお互いの身の内と地球についてだべることにした。

「着いたぞ。」
 彼らが話し始めてからしばらくして、サイバトロン軍団は基地に帰還した。
『うっわ〜、凄いなー……。』
 ユウタとサラは、初めて目にする異星のテクノロジーを前に、驚きを隠せないでいる。
「なあに、大した事ないさ。ワシらの方が、この地球と言う星の文明の高さに驚きたいほどじゃよ。」
 地球文明の偉大さに一番感銘を受けているホイルジャックは、あくまで謙虚に、2人の子供達に対応する。
「まーこんなにエネルゴンが埋蔵されているのに、それをうまく活用できていないのはちと残念じゃがの。」
『エネルゴン!?』ホイルジャックの言葉に、子供達が敏感に反応する。「まさか、学校でデストロンが掘っていたあれ、エネルゴンだったの!?」
「何!? 君達、エネルゴンの事を知っているのか!?」
 ユウタの意外な発言にコンボイは驚いた。そして彼に対し、サラが説明を加える。
「ええ。私達の両親が、エネルゴンの研究をしてるんです。」
 サラの説明が終わると、コンボイは悩んだような表情を見せて、
「そうだったのか……。この事がデストロンの連中に知られるとまずいな……。」
と、声に出るか出ないかの声でつぶやいた。

 一方、デストロンの方はと言うと、先の戦闘の大爆発に巻き込まれながらも、かろうじて基地に帰還できたようだ。
いたたたたたたっ! ……ったく、もうちょっと静かに優しく出来んのか!」
「もっ、申し訳ございません、メガトロン様!」
 戦闘で一番大きなダメージを受けたメガトロンは、部下に自らの修理をさせているが、あまりにも乱暴な腕前ゆえに傷口がしみてたまらないようだ。
「大体、何で総大将が戦闘で一番ダメージを受けてなきゃならないんだ? メガトロン、あんたのやり方はリーダーにふさわしくないんじゃないの?」
「てめえよりはマシじゃい、スタースクリーム! ……それよりサウンドウェーブ、テレビつけてくんない? 暇でしょうがないのよ。」
「カシコマリマシタ。」
 デストロン基地は、留守番をしていたメンバーの工事により、地球のテレビ局の電波を受信できるようになっていた。彼らもまた、戦略上地球の情報を1つでも多く手に入れたいのだ。さて、サウンドウ ェーブが修理室中央のモニターの電源を入れると、丁度科学者らしい男が記者会見を受けている場面が映し出された。
「ふむふむ、これはこの星のニュースかな? ……!? こ、これは……」
 メガトロンは、いや、場に居合わせたデストロン兵士全てが、自分の耳を疑った! 記者会見を受けている科学者の発言は、まさにエネルゴンのことだったのだ! 会見によると、エネルゴンはつい最近発見され、いずれ来るであろう地球のエネルギー危機を救う救世主となるであろうこと、地球上の至る所に埋蔵されているもののその量は有限であること、そしてデストロンにとって一番重要なのが、エネ ルゴンはこの世のエネルギーで合成が可能らしいことが明らかにされた。
「これだ! これさえあれば、にっくきサイバトロンどもを叩きのめすだけでなく、この宇宙をも支配できる!」
 メガトロンの心に、大いなる野心が再び燃え上がる。
「よーし野郎ども、俺様の怪我が治り次第、今テレビに出てる奴の研究所に殴りこむぞ!」
『アイアイサー!』
 デストロン軍団の中に歓喜の声が響き渡る。が、
「でも、どうやってやるんですか? 我々はこの星の地理すら、ろくに分かりませんぜ。」
と言うスタースクリームのつっこみで、一気に冷めてしまった。
「ぐっ……。貴様ごときに言われたかあねえが、確かにそうだな……。おい、リフレクター3人衆! エネルゴンの研究所がどこにあるか、洗いざらい調べて来い!」
『ハッ! 了解しました、メガトロン様。』

 ――数日後――

「本当にここで良いんだな。」
『ハイ。この数日間、我々が調査したところ、この研究所に例の科学者が頻繁に出入りしていました。エネルゴンの研究施設は、ここで間違いないでしょう。』
 デストロン軍団は遂に、エネルゴンの研究所の場所を突き止め、今まさに攻め入らんとしていた。
 一方、デストロンの来訪に全く気付いていない研究所のスタッフ達は、今日もエネルゴンの研究に取り組んでいた。
「うわあぁぁぁぁっ! ……申し訳ありません博士、また、エネルゴンの合成実験に失敗してしまいました。」
「良いんだよ、失敗は成功の元とも言うからね……。それより、今まで我々の研究を理解しようともしなかった連中が、研究に少しでも興味を持つようになってくれただけ、大きく前進したと言うものだ。」
「……そう、ですね……。」
 科学者とその助手らしい男が、エネルゴン研究について会話をしている。そこに、一人の女性研究員――科学者の妻でもある――が、血相を変えて飛び込んできた。
「あなた、大変よ! 研究所のすぐ近くに、謎のロボット達が!」
「何だと!」

 科学者が振り向くと、メガトロンが研究室のドアを破壊して侵入してきた。
「お邪魔しま〜す。星崎博士、エネルゴン研究の件でお伺いに参りました。」
 不気味なほど丁寧な口調で語りかけるメガトロン。しかし星崎博士たちは、この招かれざる訪問者達に対し、警戒を解こうとはしていない。
「何だね君達は! 用事があって部屋に入るときは、ノックをするか一言声をかけてから入るのが礼儀というものだろう!」
 博士は強い態度でメガトロンに怒鳴りつける。その態度にスタースクリームは逆ギレし、彼に銃口を向ける。
「何言ってやがる! 命が惜しかったら、俺達にたてつく様なバカな真似はやめるんだな。この弱っちい下等生物めっ!」
「ぐっ……」
 スタースクリームの行動に対し、遂に博士も屈してしまった。間を置いた後、博士はさらに言葉を続ける。
「……で、用件と言うのは?」
「な〜に、簡単なことですよ。実は我々も、この星とは別の星でエネルゴンの研究をしていたんで……」
 博士の質問に対し、メガトロンが答える。返答が終わるか否かの所で、博士は
「で、我々の助けがいる、と?」
「おお、それなら話は早い。今後の発展のために、是非、我々に協力を!」
「とんでもない! お前等みたいな連中に協力しろだと!? こっちから願い下げだ!」
 博士は頑として、メガトロンの要求に応じようとしない。スタースクリームの怒りはますます溜まる。
「貴様っ! てめえが今置かれている立場が分かってるのか!」
「まあ待て」はやるスタースクリームを制して、メガトロンは話を続ける。「あんた、世間の連中を見返してやろうとは思わないのか?」
「!?」博士の心に揺らぎが生じた。メガトロンはさらに言葉を続ける。
「あんたの研究は、世間から何の評価もされていない。そうだろ? だったら我々と一緒に研究を完成させて、他の連中をぎゃふんと言わせてやろうじゃないの。エネルゴンが欲しいのは我々も同じだ。どうだ? 一緒に研究してみない? 悪くはしませんぜ。」
 どこからそんな情報を仕入れたのか、メガトロンは博士の“弱み”らしきところを突いて、巧みに仲間に引き入れようとする。スタースクリームは懐疑的になって、小声でメガトロンに問い掛ける。
「本当にこれで大丈夫なんですか? 大体、こいつらの研究が理解されていないだなんて……」
「な〜に、思いついたことをちょっぴり言ってみたまでよ。このテの星にはよくある事だ。それに、見ろ。やっこさん、どうも図星みたいだぞ。」
 博士を見ると、どうやら震えているようである。博士は震えた声で、言葉をつむぐ。
「……そうだな。今までこの世の多くの連中が、我々の研究を理解するどころか、自分達の利益が危ういからと言って妨害すらしてきた! 君たちは見たところ、地球よりも遥かに優れたテクノロジーを持っているみたいだな。ならば、共に証明しようではないか! 我々の研究が間違っていなかったことを!」
 遂に博士は、メガトロンと協力する決意を固めた! メガトロンも大いに感激し、
「そう! その意気ですよ、旦那! 我々と共に研究して、地球上、いや、全宇宙の愚民どもをぎゃふんと言わせましょう!」
 こうして、地球のエネルゴン研究者とデストロンが手を結び、コンボイの不安は、現実のものになろうとしていた……。

 そして数日後。星崎博士は、エネルギーキューブ製造機――手に入れたエネルギーを固体状に濃縮する機械である――を改良したエネルゴンキューブ製造機の開発に成功した。まだテストは済んでいないので断言は出来ないが、この機械があれば様々なエネルギーをエネルゴンとして貯蔵することが出来るのだ。製造機を手に入れたデストロンは、テストの場所として水力発電所を選び、早速襲撃を開始した。
 デストロンが発電所を制圧すると、星崎博士はメガトロンに告げた。
「良いかメガトロン、今回の実験で出来たエネルゴンキューブの7割はお前にくれてやる。残りは今後の研究材料として私がもらう。良いな?」
「分かってますって、旦那。……よし、野郎ども! 実験開始だ!」
 メガトロンの合図と同時に、サウンドウェーブがエネルゴンを貯蔵するためのキューブを作り出し、発電機のコードにつなげた。そしてあらかじめ人工湖の底に待機していたフレンジーが、
「オラオラオラァ!!」
 ハンマーアームで湖底を叩き始めた。湖の水が共振をはじめ、大津波が起こる。
「やめてくれ! このままでは発電限界量を超えて、発電所が爆発してしまう! それにダムが決壊してしまったら、ふもとの町は大洪水だ!」
 囚われの身となった発電所の職員達は、メガトロンを止めようと必死に叫び声をあげる。しかしメガトロンは、そんな彼らの警告に耳を貸そうともしない。
「じゃあかしい! 発電の限界までやらなければ十分な量のエネルゴンが作れんのだ! 貴様らはぴーちくぱーちく叫んどらんで、そこで黙って見てろ!」
 メガトロンの指揮の元、次々とエネルゴンキューブが作られる。大量のエネルゴンキューブを目の前にし、メガトロンの顔に笑みが浮かぶ。しかし星崎博士は、眉間にしわを寄せながら、完成したエネルゴンキューブと対峙している。
「どうしました、旦那? 何かご不満でも……」
「ああ。リミット限界まで発電して、この品質ではいまいち使いにくいな。量を減らさずに、もっと品質を上げられるはずだ。」
「ま、まあ、それは今後の研究課題ということで……。」

 一方サイバトロンの方も、水力発電所の異変に気付いていた。彼らは地球上のどこにいても、デストロンをすぐに見つけられるよう、無数のスパイ衛星を打ち上げていたのだ。
「この発電所の様子、やっぱり普通じゃありませんね。デストロンの仕業に間違いないでしょう。」
 プロールがコンボイに告げる。
「……そうだな。よし、ハウンドはダムの底を調べてくれ。バンブルとアイアンハイドは下流の方を頼む。残りのメンバーは発電所に突撃だ!」
『了解!』
 こうしてサイバトロンは三方に分かれて、デストロンの悪事を阻止すべく行動を開始した。
 まずはハウンド。彼はダムの人工湖に飛び込むと、自慢の鼻でデストロンを探し始めた。しばらくすると、彼の視界にフレンジーの姿が入った。
「!!」
 ハウンドはすぐさま、フレンジーに跳びかかった。水中での激しい肉弾戦が始まる。
 次に、下流の方に向かったバンブル達の方を見ていこう。案の定、ダムから溢れ出した水のお陰で、下流域ははげしく増水していた。
「どうしよう、このままじゃあ水がどんどん増えて、下流の町が飲み込まれちまう!」
「落ち着けバンブル! 新しく溝を掘って、溢れた水を逃がすんだ! トランスフォーム!」
 アイアンハイドの提案で、彼らは溝を掘って溢れた水を逃がす作戦に出た。無論、普通に掘っていても間に合うはずは無いので、自動車に変形したアイアンハイドの上からバンブルが銃で溝を作っていくのだ。勿論これは一時凌ぎに過ぎないが、ハウンドとフレンジーが水中で取っ組み合いをしている間に津波は収まるはずなので、とりあえずはこれで大丈夫……らしい。
 そして、残りのメンバーはというと、
「サイバトロン戦士、アタァァック!」
 元気よく発電所に殴りこんだようだ。
「げげっ、サイバトロン!?」
「デストロン、やはりお前達の仕業だったのか……。すぐにここから立ち去るんだ!」
「ケッ、ここまできて誰が逃げるか、バーカ! デストロン軍団、アタァァ〜〜ック!」
 サイバトロンとデストロンの戦いが始まった! 戦いに先駆け、チャージャーとドラッグの2名が、人質となった人々のところに向かった。
「皆さん、ここは危険です! すぐに逃げてください!」
「トランスフォーム! さあ、乗った乗った!」
 どこから持ってきたのか、ドラッグの後ろにはなぜか荷台がついている。彼は後ろの荷台に人質を乗せると、すぐさま安全な場所に移動した。チャージャーはその護衛となっている。
 別の場所では、クリフとスカイワープが激しい戦闘を繰り広げている。彼らの放った攻撃は互いの足元に当たり、2人はバランスを崩して一緒に落っこちてしまう。
「あ゛〜〜〜〜〜〜っ」
「ところがぎっちょん、俺は空を飛べるんだぜ! トランスフォーム!」
 スカイワープはとっさに変形して地面激突をまぬがれた。が、そんなことなど出来ないクリフは、ただ重力のままに落っこちていった。そして、
『ぐはあっ!』
 下で戦闘をしていたランブルの頭上に落っこちた。二人は互いに頭を強打し、気絶してしまう。
 そしてリーダー同士の対決。コンボイとメガトロンの両名はダムの上で対峙している。
「メガトロン、お前はまだ分からないのか? お前達のやっていることは、誰にも利益をもたらさない、ただの破壊行為なんだぞ!」
「必要悪だよ、コンボイ君。科学の進歩には犠牲はつきものだ。分かるだろ?」
「……どうやら、お前との関係もここまでだな!」
 コンボイはそう言うと、背中からエネルゴン・セイバー(エネルゴンの結晶で出来た剣である)を取り出し(だからどこにしまっていたんだ!)、メガトロンに向かって構えた。同様にメガトロンも、
「フン! その言葉、貴様にそっくり返してやる!」
エネルゴン・セイバーを構えた。2人の激しいチャンバラが始まる。彼らが剣を振るたび、互いの武器の刀身は激しく打ち付けられ、強力なエネルギーの火花を撒き散らす。
「フン、フン!」
「このっ、このっ!」
 二人の斬り合いはさらに激しくなり、息もつかぬ攻防を繰り広げる。そして、
『ぐぬうぅぅぅぅっ!』
 そのままつばぜり合いに移行した。二人の動きが止まり、緊迫した空気が流れる。そして、

ドオォォォォォォン!

行き場の無いエネルギーが大爆発を起こした。吹き飛ばされたコンボイとメガトロンは、滝つぼへとまっ逆さまに落ちてしまう。
『うわあぁぁぁぁぁぁっ!!』
 さらに、ダムの底で戦っていたハウンドとフレンジーまでもが、ダムの排水溝から流されてきた。メガトロンはひらりと飛んで回避するが、コンボイは流された2人共々、もつれながら滝つぼに落ちてしまった。
「だーっはっはっはっ! いつでも正義が勝つとは限らないのだよ、コンボイ君。それじゃ、バイバイ キーン!」
 落っこちていくコンボイを尻目に、メガトロンはあざけりの言葉を放ち、去っていった。

 メガトロン達がエネルゴンキューブを持って去っていった後、コンボイとハウンドは、なおも流され続けていた(フレンジーはどさくさにまぎれて逃げていったようだ)。二人とも基本的に泳げないので、このままでは溺れてしまう。
「あっ、コンボイ指令!! ハウンドと一緒にこれにつかまってください!」
 流されているコンボイ達をいち早く見つけたマイスターは、とっさに釣竿を取り出し、コンボイたちに向かって飛ばした。
「す、済まない、マイスター……」
 コンボイはかろうじて先端の錨を捉えると、マイスターは一気にロープを巻き上げた。
 コンボイ達を無事、助け出したサイバトロン戦士達は、今後の戦いの事を話し合うことにした。
「……デストロンは、他のエネルギーからエネルゴンを作り出す方法を手に入れたわけだ。この先、デストロンが実験と称して、地球のエネルギー施設その他を襲撃するということは予測できるだろう。そして、我々の方が少し不利なのも否めない。だが、我々は諦めてはならない! これ以上デストロンの手にエネルゴンが渡らないよう、戦うのだ!」
『おーっ!』


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